平成16年度 北米西部地区補習授業校現地採用講師研究会

報告書

 

日 時 2004730日(金)~81日(土)

場 所 カルガリー市 ロイヤル・エグゼキュティブ・イン

幹事校 カルガリー補習校

 

730日(金)食事会(自己紹介、連絡事項)

 

731日(

8:30~9:30

補習授業校の目的と役割 栗原祐司:文部科学省ニューヨーク国際交流ディレクター

 

1.補習授業校の役割

 補習授業校は、現地校に通学する児童生徒が、ふたたび日本国内の学校に編入した際にスムーズに適応できるよう、基幹教科の基礎的基本的な知識・技能および日本の学校文化を日本語によって学習する教育施設。

      日本の教科書を日本の教え方で。(現地方式で教えない。)

      異文化に囲まれた生活に、心の安らぎを与える場。日本から着たばかりの子供にとってストレス解消になる。

      日本の学校文化を学べるのは補習授業校だけ。日本で学校へ行った時に日本の学校文化に溶け込める。日本の学校らしさを作る。例:標示を貼る。挙手起立して答える。教室は神聖であることを教える。ものを床に置かない。

      単なる日本語教室ではない。(日本国政府からの補助)

      現地校での生活は、日本の学校の「総合的学習の時間」の数倍の価値。(地域の特徴を生かして学校が考える。教科書はない.)

 

*日本では、反復、復習を含んで200数時間なので、補習校ではそれらは宿題でこなし、授業では、重点のみを教える。

中学校、小学校の『学習指導要領』と『指導書』(全国統一)に基づいて教える。教科書を教えなさいとは、書いてない。

 

2.家庭の役割(帰国後の再適応に向けて)

「家庭は第二の教室、保護者は第二の担任」

      補習授業校にまかせっきりでは効果なし。(繰り返しが重要:学校で学んだことを家庭で復習することが大切)

      a補習授業校の勉強(宿題を含む)をしっかりやること。

      b家庭では日本語を使うこと。(家庭内でルールを作る。目的意識を持たせる。例:お母さんの老後痴呆になったとき介護しなくてはならない。日本のおじいちゃんと話したいから。)

      c日本語の本を読むこと。

*日本で行った調査で、日本に帰国して優秀を成績を上げる生徒は、上記abcをしっかりやった生徒であるという結果が出た。

*日本語の本を読む際、決しておしつけない。感想文を書けと言わない。ある程度はマンガでもいい。マンガは、日常会話に親しむよい教材。但し、下品なものを除く。

*学校便り-日本語のみが望ましい。親も日本語を習ってほしい。

 

3.担任の先生と保護者との意思疎通

      週一回であっても、担任の先生と保護者との連絡を緊密に。

      保護者の厳しい眼が、教員の資質向上につながる。半分私立だから、保護者のニーズに対応する。親の意見を聞く。

      教員は、年令や滞在期間によって国語力が異なる児童生徒一人一人に対し、適切な指導と助言をすることが求められている。

      教員による生活指導も重要な学習基盤。子供は教員を見て育つ。子供にとって親と教師だけが日本語なので、そのまねをする。子供に対する影響は大きい。

教師は、1.スラングを使わない(親から苦情の出たケースもある。)2.カタカナ言葉を使わない。例:モティベーション 何時から店がオープンする。日本語でしっかり説明する。3.差別用語を使わない。(女中)4.方言を使わない。

      「英語は使わない」ことの徹底。日本語が原則。但し、1.危機管理、2.セキュリティチェックに関しては、英語も使う。

      教員同士がいがみ合っていては、しめしがつかない。

       

4.補習授業校のアピールの必要性

      国際社会が進展する中で、補習授業校の子どもたちの活躍の舞台が増大。

「補習授業校」の知名度アップの必要性。北米には80校(約?)の補習授業校があり、帰国子女の2/3が経験者であるが、日本でそのことを言わない。なぜなら、よく知られていないから。知名度、貢献度をPRする必要がある。

      「補習授業校」の出身であることの誇りと自信を。補習授業校出身であることに誇りを持たせたい。

       

5.永住・長期滞在者の学習意欲を喚起するには

      日本人・日系人であることのアイデンティティが、子どもの「自ら学ぶ意欲」を引き出す。

      日本語作文コンクール等に積極的に応募する。コンクールに応募すると励みになる。

      「補習授業校卒業生」の声を聞く。

      長期休業中の日本への帰国や、体験入学。(友達ができて文通などするようになるといい。)

*日本人であることのアイデンティティ:日本語を話すことがアイデンティティを育てる。

例:日本画家「日本語を話さないと、日本画は描けない。」

  できたら、日本の文化歴史、日系人の歴史を教える。

      学ぶ意欲を引き出すには、例:将来就職するときに役立つ。選択肢が増える。

      卒業生の答辞(「ぼくは半分アメリカ人で半分は日本人です。。。。」感動的な答辞を在校生にも読んで聞かせる。将来の指針になる。

 

最近、外国で生活している子供の文化的変容について講演をした。

「どんな子供が外国文化生活になじみやすいか。」

1.  長期滞在

2.  白人ばかりより、各国の子供たちがたくさんいる学校に入学した子供の方が適応性が強い。孤立感を感ずることなく、世界にはたくさんの異文化があることを理解する。

3.  母親が現地生活になじんでいる。

 

      ニューヨークの相談室にはカウンセラーもおり、電話で相談もできます。(子供の精神的なこと、障害を持った子供のことなど。)

 

9:40~12:30

模範授業と協議①数学 講師 谷田貝安孝氏 あさひ学園(日本からの派遣教師)

 

日本での教師体験と日本の中学の現状紹介の後、加法減法の教え方の授業がありました。(資料別添、委細省略)

 

そのほか、よりよい授業をするための注意点や対策などのお話があり、国語授業にも通じるものがありましたので、以下のようにまとめました。

 

1.より良い授業

      教材研究 -教材を吟味する。削除、付け足し、多様性、発展性があるものを選ぶ。配列を工夫する。

      指導方法の工夫

      評価を生かす‐授業終了後、反省して次のクラスに生かす。                      

      生徒のノートを机間巡視して、自分の指導方法の反省材料とする。

      教師の資質、個性を生かす。

       

2.数学授業における課題と対策

 1)教科書の例題や問題の扱い

      指導計画立案 -授業展開の具体化

 -個を生かすと生徒が主体的になる。

                                                       -生徒の興味関心を高める話題を探す。クラスで中学生小学生に

         人気のあるものについて雑談する。雑談して授業に戻ると集中できる。

      家庭学習ができないのは、(数学の)授業がわるいからではないかと反省する。

      例題の扱い方で生徒の学習意欲が変わる。

      誤答を(生徒の気持ちに配慮しながら)ポイントを説明するのに利用する。

       

 2)板書

      板書は計画的に書く。設計に気をつけ、一時間に習ったことが全部見渡せるようにする。(数学の場合)

      何色かのチョークを使う。

      ノートを書く時間を与える。板書にしてすぐ説明しない。

       

 3)机間指導

      生徒の理解度、授業態度を把握するためにする。                              

 

机間指導のいろいろなタイプ

・教卓密着型(机間巡回しない)

・軌道周回型(同じところを回る)

・各駅停車型

・散歩型

・一箇所集中型

・宣伝カー型(しながら大声でいろいろしゃべる)

・タクシーストップ型(手を挙げた生徒のところへ行く)

 

 

 

生徒が授業に集中しない

4最近は、授業に対して無気力・無関心である生徒が増える傾向にある。そのような生徒を集中させるには、授業展開に工夫が必要である。

 

 

 

やる気を引き出す指導をしているか

 

1.明確な授業目標と気迫

明確な授業目標と「分からせよう」とする教師の気迫が、生徒の理解しようとする気持ちを引き出す。また、「分かった」という充実感が宿題をやって来る原動力にもなる。逆に、「どうせやってこないだろう」と諦めてしまうと、生徒もそれを敏感に感じ取り、ますます勉強しなくなってしまう。

 

2.個に応じた宿題の提示

必要に応じて個別に宿題を提示し、状況を見ながらいっしょに考えるのも効果がある。一教師対一生徒の関係を作ることが大切であり、それによって「見てくれているんだ、やらなくては」と思う生徒も出てくるものである。

 

 

 

 

対 策

 

1.  参加型の授業にする。

2.  授業にアクセントをつける。

 ・授業の一部分でも集中できるような工夫をする。

3.  教師自身が気をつける。

 ・授業時間を必ず守る。・授業計画をしっかり立てる。

喜びを見出せる授業を。

 

 

1.参加型の授業にしよう

 生徒自身が集めたデータを用いたり、コンピューターなどの教具を利用したりする授業であると、生徒は積極的に授業に参加し、達成感・充実感を味わうことができる。このような参加型の実験・実習授業には、生徒はおのずから集中して取り組む。又、作業プリントを用いて学習するのも集中させる一つの手段である。この場合は、作業を通して生徒が何かを発見し、その発見を更に発展できるようにすることが大切である。 いずれにしても、生徒自身の気付きや発見を大切にして、数学を「創る」ような授業にしたい。

 

 

2.授業にアクセントを付けよう

 最初から生徒を引き付ける授業のできる教師は稀である。しかし、授業で、学習内容に関連した興味深い例を示したり、生徒の関心をもつ話題、教師自身が最近気になっている話題、学校行事に関する話などを「雑談」として取り入れて気分転換を図ったり、ポイントごとに発問して要点を確認したりする工夫はできるのではないだろうか。

 

 

3.教師自身が気をつけよう

1.授業時間は必ず守る

 教師は、始業のベルが鳴るときには教壇に立っており、終業のベルが鳴ったらすぐ授業を終わるようにすべきである。教師が時間にルーズであれば、生徒もこれにならうことが多く、授業全体の緊張を欠く原因にもなる。時間を守ることは社会生活の基本である。

2.授業計画をしっかり立てる

 生徒のためにと思い、多くのことを教えようとがんばって授業を延長することがあるが、これは良い結果を招くとは限らない。集中力が欠けて、内容の徹底ができないことが多い。授業を延長しなくてよいように授業計画をしっかり立て、教師自らが初めと終わりでけじめをつけるようにしたい。

 

 

4.喜びを見いだせる授業にしよう

 授業では、生徒にどんどん発問して参加意識を高めよう。良い意見に対しては大いにほめよう。意見交換の中で導かれた公式には「○○さんの公式」と命名したり、授業の展開に使えそうな意見を大きく取り上げることによって、自分たちで授業を作り上げる喜びを味わわせよう。

 

 

自分の経験談(雑談)を取り入れ豊かな授業にしたい

 ・授業にはその教師の人格が反映する。

 ・幅ひろい教養を持ち自信を持って生徒に接し、

  人間味のある「良い先生」に。

 

 

 

幅広い教養をもち

自信をもって生徒に接し人間味のある「良い先生」に!

 

数学者の中には、中等教育の段階(中学・高校)で数学に熱中し、数学に対する志を立てた人が少なくない。彼らの多くに共通するのは、生来の素質の他に、中学や高校で「良い先生」に出会い、啓発されたという経験をもっていることである。これは、中等教育では生徒個人の学び方と同時に、教師の教え方あるいは学ばせ方が重要であることを示す例と言える。

 

 

雑談はより良い授業のための潤滑油

 多様な話題や雑談の必要性

 生徒にとって、授業中ずっと集中し続けることは易しいことではない。集中できる時間はせいぜい15分か20分と言われている。生徒の集中力が低下してきたときの雑談は、学習の指導に変化をもたせ効果的である。

 

目的

      気持ちをリラックスさせる。

      学習に集中させる手段にする。

授業に変化をもたせる。

 

留意点

 「授業が終わってみたら、雑談の内容しか頭に残っていなかった」と言うのでは本末転倒である。冗長になったり、脱線して授業を混乱させたりしないようにしなければならない。

 

取り上げる話題の工夫

      指導内容とかかわりをもった話題

      数学での時事的な話題

      数学史に関する話題

興味関心を引く話題

 

数学史など多くの書物を読んで話題を豊富にし、数学的な教養や知識を身に付ける努力を続けたい。

 

1:30~2:30

講義②「教員として」講師 萩原省三 あさひ学園校長(ロサンジェルス補習授業校)

 

 本日のお話、授業は日本でも教授法であり、1500名以上対象の教授法なので、取捨選択して取り入れてほしい。

 

 教師として、心掛けることとして、心を開いて、生徒、保護者に触れるということ。

いい教員としての条件 1.教える教科が大好き (研究が苦痛でない)

           2.子供が大好き

           3.教師が勉強好きなら、生徒も勉強好きになる。

 

教師の指導力を高めるためには、自分の授業を見てもらって意見を聞くことが効果的。

特に、机間巡視、板書、発問の仕方を研究する。

 

あさひ学園校長として4校を巡回するが、その際、先生方に言うことは、

1.  コマーシャル世代に対応する。集中できる時間は15分。内容や作業を変えて、集中を図る。

2.  教師としてのアイデンティティを持つ。生徒は先生を試すものである。(例:足を投げ出してすわって、先生の反応を見る。そのままにしない。注意する。)クラスの始めに起立、礼をさせる。きちんとできるまでさせると一ヶ月くらいでできるようになる。そのままにしていると、甘い方に流れる。これだけはやろうと決めたことは、大変でもきっちりやらせる。教師として許せないことを、一つ、二つ持っていること。例:英語を話す。見逃さないと、徐々に収まる。          萩原先生の場合:1.命にかかわること。2.人格を無視すること(いじめなど)。現地校でのストレスの発散がマイナスに現れるようなこと(暴力など)はやめさせる。

3.  一言の重さ  「天声人語を読んだらいいよ。」と授業で言ったのを15年以上実行した教え子。一言がその生徒の一生を左右することもあるから注意する。

4.  ドラえもんのポケット  教師はドラえもんのように、たくさんの知識を持つこと。そのような先生には子供がついていく。または、何か一つでも深い関心と知識を持っているとよい。(例:植物や魚が大好きで虫を蚕から育てた理科の先生、魅力ある人として慕われる。)

5.  子供の観察  子供が教室にいるかチェックする。顔や表情をよく見る。悩み、体調、その他(親とけんかしたなど)を知る。

 

あさひ学園の編入説明会 9

 保護者に、あさひに預けたから安心ではなくて、入学したときから親もいっしょに苦労が始まる、親もいっしょに勉強してくださいと考えてくださいと言う。

  

日本の教育界の動向

1.  開かれた学校

2.  基礎基本の徹底  学び方を教える。きっかけを与えれば、やり出して力をつけていく。「本を読め」と言わないで、こんな話だと紹介したり、さわりの部分を紹介する。詩を朗読してあげる。

 

 

あさひ学園(補習授業校)の現状と課題

1.  国語力の格差 漢字が国語力のものさし。認定証をもらえる漢字検定テストの宣伝をして、受けさせる。励みになる。

2.  ストレスの発散

学習意欲の低下 

      意欲のない子供の三種類 a. 親に来させられている。b. 意欲的だが、学業などが忙しくなって宿題などができなくなる。c. 国力が不十分で、理解でしないのでやる気がなくなる。

      保護者もストレスがたまる。親の悩みを担任として聞いてアドバイスできると、子供と教師の関係もよくなる。家族でやれるものを作って与える。

3.  保護者のニーズの多様化                          学級通信などで、メッセージを出す。学級としての目標などをはっきりさせる。子どもたちの様子を知らせると親も安心する。

4.  生徒指導の困難さ

 

前任校長メモより:ちょっと考えてみたいこと

1.  平凡な教師はよくしゃべる:今の半分くらいの量でもよい。

2.  良い教師は、よく咀嚼して教える。

3.  優れた教師は、子供によく考えさせる。答をすぐ要求せず、待つこと。

4.  偉大な教師は、子供の心に灯をともす。

 

〈質疑応答〉

1.  絶対評価の定義と補習校での適用

 

  〈答〉相対評価はおかしいので、補習校では絶対評価に個人内評価を加味した評価のやり方がよいと思う。個人内評価:その生徒が100%の力を出して一生懸命やって

いるのなら、50点しかとれなくても、「5」をつける。補習校の評価の意義は、子供がやる気を出すようにさせるものであること。

 

2.  親の希望で通学するが、ついていけない生徒はどうするか。

 

  〈答〉対処は段階的にするのがよい。例:親と相談‐親につきそってもらう‐退学。

 

 アンカレッジ 生徒は来たがるので継続。評価を出さない。

 カルガリー  入学テストを行う。テストと実際の入学の間に時間があるので、(できない子どもは)その間に学習させておく。小学1年生で留年して成功した例もある。

 

 

2:30~3:30

講義③生活指導 講師 杉浦 浩 あさひ学園教師(日本からの派遣教師)

 

教育の目標は    1.人間を育てる。(補習校も学校の一つ)

          2.日本人としてのアイデンティティを育てる。

 

最近の若者の言葉として、「きしょい」、「きもい」がよく使われている。前者は「きしょくわるい」、後者は「きもちわるい」の意味である。若者はよく「キレル」のは、人々が忙しくて人間関係が希薄になってきているから。短い言葉を使うのは忙しい大人が聞いてくれない、しゃべっても振り向いてくれないから、もっと味の濃い過激な言葉を使うようになる。カウンセリングは、話を聞いてあげるということが大事である。大人が子供の話を聞いてあげる。話をしていると、だいたい自分で解決していくことができる。

 

1.日本の生活指導とアメリカの生活指導

 

違い  日本:健全育成(問題のない学校でも生活指導する)

    米国:秩序維持に重点がある。(人種が多いので例外を設けず、規則によって秩序を保とうとする。例:Yellow card

 

子供にとって行動の理由付けとなるものは、米国:他律

                    日本:自律

 

 *勉強に対する意欲の持たせ方

              ×先生「成績下げるぞ。」-生徒への抑止力なし。

              ○生徒「何で、勉強せんならん。」に対して、 

                     先生「何でと言っても、勉強せんならん。勉強せんならんもんは、べんきょうせなあかん。」

 

2.現場教師の苦悩

日本の中学での体験をもとに、いかに日本では教師の受難の時代となっているかを紹介されました。

 

3.生活指導とは

 

指導のありかた

      教師によって指導のやり方がちがわないようにする。ある先生は、机の上の教科書が出ていないと、注意するが他の先生は何も言わないのはよくない。この場合、厳しい方の先生に矛先(反抗)が向くようになる。

      生徒指導のマニュアルを作る。マニュアルに沿った一貫した指導を徹底する。指導方法は百万ほどもあるが、要は(教師と生徒)共通の理解を図っておくこと。子供にとっては善悪の区別は難しいが、先生の言うことが人によって異なると、子供は理解できない。教師の裁量権なしで、徹底する。

      他律(規則)から自律できるように指導する。

 

4.補習授業校における生活指導を考える

 

・国語教材を通して「強く正しく清く生きる」ということを教える。「生きる力」を育成する。

・三無(無気力、無関心、無感動)主義の解消を図る。

      自然に目を向け親しませる。

      芸術に目を向ける。例:合唱(無理に口を開けさせる‐感動‐歌が好きになる)

      社会に目を向ける。例:兵庫県では一週間学校外で学習する。自分のやりたい仕事を知る。適性を知る。現実の仕事の楽しさを味わうなどの成果を挙げている。

 

      出身校に誇りと自信を持たせる。

      日本人としてのidentityを育てる。

 

〈質問〉

授業時間にトイレに行きたくなった子供を規則で「行ってはいけない」と縛るのはどうか。

〈答〉

規則は通過点である。トイレに行くことで、授業の妨げになり他の生徒に迷惑がかかり、本人もその時間授業が受けられず損になる。休み時間に行っておくことができるのだし、しつけのためにも、団体の秩序を保つということを教えるためにも規則を守らせる方向で指導する。

 

 

81日(日)

9:00 ~ 11:00

模範授業と協議①国語 講師 杉浦 浩氏 あさひ学園(日本からの派遣教師)

 

模範授業のテーマ:中学2年生の文法の授業をいかに楽しく教えるか。

光村中2国語「単語のいろいろ」の中の文節についての授業をされました。本当はいろいろ順不同で出てきたことですが、全部を説明しながら書くと、膨大になり分かりにくくなりますので、以下にそれを項目ごとにまとめてみました。

 

音読 オーソドックスな授業では教科書を音読して聞かせるが、斉読させる方がよい。口に出して発声は気持ちがよく、周りの声で間違いをみつけることもできる。但し、読めても意味は分かっていないので、発問する。

 

発問

「真剣に考えていない子にあてるよ」(笑い)と言うと、形だけでも一生懸命になる。

「文節って何ですか。」ノートに答を書かせる。その間、机間巡視する。この際教師は黙っている。

   ・一問一答式は避けたほうがよい。(例主語はだれ?)

                  できる子はすぐ答える。できない子は考えない。

                      できない子を当てると、答えられず時間がかかってできる子がいらいらする。

      一問多答式 一つのテーマでいろいろな答のでるものを出す。

      抽象な発問はしない

      一律の発問の仕方ではなく、たまにはフェイントをかけた発問の仕方をする。

『美しいそうだ』は1文節か2文節かという質問で、「1番が1文節、2番が2文節」だと言って、「先生が○番と言ったときに、そうだと思う人は手をさっと挙げる」と言う。 普通は最初に「1番だと思う人」と聞くだろうと思うが、先に「じゃあ、聞きますよ。2番!」と聞く。たいてい間違える。笑って気分がほぐれる。

 

作業の早い生徒と遅い生徒

      答を出すことではなくて、考えさせる目的の場合は、できてしまって退屈そうな生徒が二人くらい出たら終わりにする。

      早く終わった生徒には、次の質問をする。例:「単語とは何ですか。」その際、メインの質問が答え終わった後、単語とはなんだか分かったか聞いて見る。(たとえ一部の生徒への質問でも、出した質問は必ずその答を聞く。)

      一人もくもくとやる生徒と、隣の生徒と相談したりする生徒がでる。クラスの迷惑にならない限りそのままにする。(要は集団のプラスマイナスを基準とする)

 

説明

      比喩表現で説明すると分かりやすい。

      辞書表現と自分の言葉で表現することと二通り使う。

      教科書を読んで説明するだけでは飽きる。マーカーで線を引かせる。「今から読むところにマーカーで線を引くこと。」大きな声でその箇所を読む。「はい、これに線を引いて。」

      プレッシャーをかける。「後で会ったら、自立語って何って聞くよ。」と言う。放課後会ったら、本当に聞いてみる。答えられなくてもいい。コミュニケーションを図ることができる。これは貴重。「こんなこと覚えてどうする?覚えてどんな言いことがある?」と聞く生徒に対しては、国語の目的をはっきりさせておく。「そうだなあ。これを覚えておくともてるよ。」ジョークもいい??

 

答え合わせ

      質問を出して、黒板の前にたくさん出させて答を書かせる。漢字を書かせる。みんなで出るといやがらない。分かる子が分からない子に教えるなどのいい面も出る。

      交換して答え合わせ。

      ほめる。

      答を聞いた後、正解でも「それでいいの?」と聞いて考えさせる。(たまに)

      答を言った後、教師がその答を復唱する。

 

授業中の態度

・寝る生徒 必ず注意を与える。注意した結果はあまり問わない。先生が生徒のことを見ているか見ていないかを他の生徒はしっかり見ている。先生は一人一人をよく見ていることをアピールする。(見ていて気にかけていることを?)

 

予習

「するな。」と言う。

      分かった生徒だけ答える結果となる。

      授業で初めて習う喜びを味わう方がよい。

 

教材研究

 ひらめき、アイディアはどこにも転がっている。机に向かっているだけではわいてこない

 

・「無人島に行く」という単元は学習意欲をそそる。

  作文を書くという学習では、内発的動機が重要である。「話せ、書け」ではなく、いかに動機を与えるかが問題である。

・教科書を全て教える必要はない。『指導要領』は、教科書を教えなさいと言ってはいない。

・ 各授業で、「今日は話す力をつける勉強をする」というように、目的をはっきりさせる。

平成15年度の文科省の保護者教師向けアンケート

児童・生徒に日本の学校生活で最も身に付けてほしいことは何ですか。

3つ選び、大切な順に番号をつける。)

1.  友だちをつくったり、自分のまわりの人々などと仲良くつきあったりするなど社会の一員として必要な幅広い能力(保護者84.2% 教師84.4%

2.  読み、書き、計算など日常生活に必要な知識や技能(保護者76.9% 教師83.1%

3. 

 

一番低かったもの「上級学校へ進学するために必要な力」(保護者22.7% 教師17.0%

 

 

11:00 ~3:00 分科会

 

グループA  (小学1年~小学3)

 

 

1)漢字の定着法

      デンバーの例:漢字検定テストを受ける。独自の教材の開発。お習字を利用する。合気道にヒントを得たやり方を使う。

      書き順を宙に書く。

      漢字検定テスト用ドリルを利用して独自の教材を開発。

      漢字の成り立ちを教える。

      鉛筆の持ち方に注意する。

 

2)作文指導 

      一文書かせて、そこから書き拡げるよう指導する。

      子供たちに興味ある題材を見つけさせる。

      生徒の作品を了解をとってコピーして、授業で使う。みんなに見せてどのようにしたらもっと良くなるか一緒にやる。

      校長先生にインタビューする。

      「たのしい」「つまらない」と言うような言葉を使わないで書くよう指導する。

 

3)授業中トイレに立って、授業を中断する。

      安全であれば、一人で行かせる。保護者に見回りをしてもらう。

      許可カードを持たせる。恥ずかしいので、気をつけるようになる。

 

 

グループB (小学4年~小学5年)

 

 

目的

学習指導及び生活指導の観点から、各学校あるいは各先生の抱える具体的問題を挙げ、他の学校や先生方の対処方法を紹介しながら、問題解決の糸口を見つけることとしました。

 

感想

現地組の増加に伴い、同じような問題を抱えているケースが多いようです。一つのケースがいくつものトピックに発展していき、具体的で実際的な解決案が多く出されました。

ケース1

どこの学校、クラスでも一番多く見られる問題であるが、現地組ばかりのクラスで、能力のばらつきが大きい。その中でも、特に一人の男子生徒(A)が、日本語能力や、板書を写す能力、授業準備などの面からみて、どうしても教師の注意を必要としている。幼稚園からみな持ち上がりということもあり、この生徒に対してはクラスみんなで助け合うという気風があり、クラスの仲も良く教師としては理想的な雰囲気で授業を運営していた。ところが、1学期の終わりごろから、この生徒以外の他の男子生徒(B)が、持って来た宿題を忘れたふりをしたり、テストや板書で必要以上に時間をかけたりするようになった。少人数クラスの中で、女子生徒は授業中何かというと教師を呼んだり、休み時間に一緒に本を選んだりと自発的にコミュニケーションが取れているが、男子生徒(B)はおとなしい性格でもあり、生徒(A)のようにふるまうことで、教師の気をひこうとしていたようだ。各生徒に対する接し方のバランスの難しさを改めて実感した。

 

解決案

・能力の低い(作業の遅い)生徒に対して:まず、子供のできることとできないことを、しっかり見極めることが最優先。できることまでも手助けしてしまわないように、自分でやらせるということを念頭に接する。

 

・能力のばらつきについて:宿題や作業課題を2段階分用意しておき、まずはクラス全員に課した課題が終わってしまった生徒には、ボーナスとして、さらに高度な課題を渡すようにする。何もすることがないような時間は絶対に与えない。ただし、あくまでもクラスでの指導であることを忘れず、個人指導にはならないように気をつける。

 

・作業時間について:子供のペースにならないように、作業時間は教師の側で絶対に区切る。事前に作業の目的を伝えることで、作業時間を調整する。

 

・板書や教科書を書き写すのが遅い生徒に対して:光文社の『写し丸君』などの教材を使って、書く訓練をさせる。時間を区切って練習させ、初めは5分で半ページだったのが、今では丸1ページ書けるようになったなど、成果を形で見やすいので、生徒や保護者にとっても、励みになる。

 

ケース2

漢字指導について、漢字テストでは、あらかじめ出る問題を予告してあるため、必死に丸暗記した生徒は点数は取れるものの、定着性がとても低い。保護者は、日本語力を漢字能力で図ろうとする傾向が強いので、テストで高得点を取らせるために、テスト範囲の予告は完全に要求されており、テストそのものも無意味な感もある。

 

解決案

・出る漢字は予告するにしても、漢字だけを空欄にして出題するのではなく、違った文章中の単語として出題すれば、少なくてもその文章は読まなくてはいけないので、その漢字や言葉の使い方を学ぶことにつながる。

 

・新出漢字だけでなく、既習漢字もボーナスとして出題し、定着を図る。

 

・漢字テストの出題の仕方で、テストの点数が左右されるので、少しでも難しくすると、保護者から他の(去年の)教師のやり方と比較され、非難を受ける。特に漢字は、その学年でというよりは、何年もじっくりと時間をかけて身につけていく分野なので、学校で方針を統一した方が効果的である。

 

ケース3

校長のいない学校では、上が守ってくれないため、各保護者のニーズを受け入れざるを得ない状況にある。また学校での統一ができていないので、長くいる教師の影響を悪い意味で、保護者も他の教師も受けやすく、やりづらい。

 

 

 

解決案

・保護者に対して、本来の補習校の目的や方針をしっかり理解してもらう。保護者教育というのは、補習校のような場では、必須である。家庭の協力が必要であるというよりは、補習校は、家庭学習のお手伝いをする場であることを認識してもらうようにする。

 

 

グループC (小学6年~中学3年)

1)学習指導について 2)生活指導について

 

 

1) 学習指導

デンバー校より質問のあった、a)漢字学習、b)読解力・書く力をつけるための学習について討議。

 

a) -1 漢字学習に授業でどのくらいの時間をかけているか。

 

 カルガリー                   1は、自宅学習で、毎週テストを受ける。80点以下は追試(休憩時間)をする。

          低学年:書き順を指導する。

                       年に一回一斉テストを行う。(読み25問、書き50問)90点以上は賞状を、100点は

          賞状とメダルをあげる。

          教師会を通して、全教師が全校生徒の成績や態度などを熟知している。

 ポート   年一回、学校独自で制定した等級の中から選んでテストを受ける。 

          90%以上に賞状をあげる。学年ごとの漢字検定能力テストを受ける。

                        90%以上賞状。毎週新漢字のテスト。ひらがなのエッセイを漢字交じり文に直す。     

 デンバー         各学年不ぞろい。先生によって力を入れたり入れなかったりばらばら。

 

a)-2    漢字を覚えやすくするようにどんな工夫をしていますか。

 

  カルガリー       覚えていない生徒に追試をして覚えさせる。

  あさひ                 繰り返しやらせる。小テストと家庭学習。

  デンバー            サンフランシスコ校の堀井校長を招いて漢字学習のやり方を学ぶ予定。

 

b) 読解力と作文の力をつけるためにどのようなことをしていますか。

 

  カルガリー                  説明文で書くのが比較的書きやすいので、説明文を書くよう指導している。

  ポート   日記風作文を毎週課する。

  その他   読書感想文は難しい。

 

 

2) 生活指導

 

テーマ1: 授業中にさわぐ生徒に対してどう対処したらよいか。

 

解決案

  校長先生中心の共通理解とチームワークで対処する。まず初めに規則を作って、生徒にも知らせる。規則に沿って対処する。

 

規則:さわぐ、私語、英語、席をたつ、遅刻を対象とする。

1.  3回注意して直らなかったら、カードを渡す。

2.  カードが3枚たまったら、親に連絡すると共に、生徒に反省文を書かせる。(やったこと、何故注意されたか。これからどうするか。どうしたらやめられるか。決意など)

3.  それでも直らなかったら、親を呼んで校長と面接して注意する。

それでも直らなかったら、退学。

 

  その他の解決法

      授業で人間関係を築く。 ・ 雑談で、教師の授業以外の面も見せる。

      休み時間もいっしょに遊ぶ。

      空いている先生、校長先生などに授業に来てもらい、授業についてのコメントや評価をもらう。また、それを生徒にも聞かせる。

 

テーマ2: 生徒に日本語学校の生徒であることの自覚と誇りを持たせるには。

 

カルガリー:バス遠足、公園で飯盒炊さんなどの活動時に、縦割りのグループを構成して上級生に下級生の世話をさせる。上級生の責任感を養い、子どもたちの手本になるという自覚を持たせる。(それが授業中の態度にも反映するのではないか)

毎月第三週に全員参加のゲームをする。

 

 

 

 

 

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